Marketing Journey

使命と自己実現のマーケティング

新しい世界を創るマーケティングのプロセス

イノベーション理論「U理論」では、創造の源「ソース」のようなものがあり、イノベーションはそのソースにつながり、実体化させていくことで起こるという考え方を提唱しています。

私は、マーケティングを新しい世界を創るための「創造の体系」へと再構築することをライフワークとして取り組んでいるのですが、このU理論の考え方をマーケティングのプロセスに応用したモデル図を開発してみました。

「ソース」が、「理念(ミッション・ビジョン・コアバリュー)」として結晶化される。

「理念」を、現実世界において効果的・効率的に実現するために「方略(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」を選択する。

「方略」を、「方術(プロダクト・プライス・プレイス・プロモーション)」にて実行する。    その結果が「方略」「方術」「理念」にフィードバックされる。

この一連の流れを繰り返しながら、ソースが実体化し、新しい現実が創られていくのではないかという仮説を持っています。

あと、このモデル図によって、マーケティングの一連のプロセス、活動に対する新しいメタファーができ、発想がうまれてくるときの感覚が微細に変わるのではとも思っています。「理念」「方略」「方術」が下から湧き起こってくる感じ。

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心のあり様とマーケティング①

「発信が続かない理由は、父親との関係にあったんだ…。」

 集客などのマーケティング課題をテーマにコーチングをしていると、「親との関係性」のような、一見マーケティングとは関係がないように思うるテーマに行き着くということがよくあります。

 

講師業をされているある方の話です。

その方は業界大手である会社と契約を結び、外部講師としてクラスを担当することで収入を得ていました。

コーチングセッションを通じて、自分が本当にやりたいこと、伝えたいことが見えてきた結果、外部講師として決められた内容を教えるのではなく、自分で講座をつくり、教えていきたいという想いを強く抱くようになりました。

自分の講座を開催するためには、自分で集客を行う必要があります。

そこで、私もお手伝いをさせていただきながら、集客プロセスのデザインを行い、具体的な打ち手としてFacebookページやブログなどのソーシャルメディアを使って発信していく内容のコンセプトまで明確にしました。

あとは、自分の伝えたいことを、自由に発信していくだけ。

しかし、数週間経っても発信している様子が見られません。その方の中で何かが起きている感じた私は、次のコーチングセッションの時に聞いてみました。

すると、「集客をするためには自分の考えを発信していく必要があると頭ではわかっている。でも、いざとなるとどうしても気が乗らない」ということを聴かせてくださいました。

なぜ気が乗らなくなるのかということ明らかにするために、その方のお話や気持ちに耳を傾けていったところ見えてきたのは、「自分はからっぽだ」という、自分自身に対して持っている諦めの信念でした。

その方が自覚していたのは「気が乗らない」ことだったのですが、心の奥深く、潜在意識レベルでは、「自分はからっぽだ」という諦めの信念があり、その結果、自分の本当の想いや伝えたいことを発信するとその「からっぽさ」が周りにバレてしまうという恐れを抱き、発信を止めてしまうということが起きていたのです。

そして、その更に奥底には幼少期における親との関係がありました。

 

このように、私たちの「心のあり様」は、私たちがマーケティングを行う際に、企画の段階、実行の段階に関わらず、大きな影響を与えています。

  • 二代目社長が自分は「期待はずれ」であるという諦めの信念から、自分が本当にやりたい事業をやってしまうと先代である親にがっかりされるのではないかという恐れを抱き、踏み切れない。
  • 自分には「特別なものは何もない」という諦めの信念から、本当にやりたい事業をやって失敗をすると、地元の人たちに失敗者としてのレッテルを貼られてしまうのではないかという恐れを抱き、踏み切れない。
  • 自分には「価値がない」という諦めの信念から、高い金額を設定するとと拒絶されるのではないかという恐れを抱き、適切な値付けができない。
  • 自分は「社長の器じゃない」という諦めの信念から、本当に貢献したい人にターゲットを絞ってしまうと、他のお客さんが去り、売り上げが下がり、自分が「社長の器じゃない」ことがバレてしまうのではないかという恐れを抱き、決断できない。

ここで挙げたのは「心のあり様」における、「諦めの信念」という、ある意味、成果を限界づける一面ですが、「純粋な想い」や「自分らしさ」などの成果につながる一面もあります。

いずれにせよ、私たちがマーケティング活動を行うとき、「心のあり様」にはあまり注目されません。

しかし、「心のあり様」の変化が、マーケティングに大きなブレイクスルーを生み出すことがあるのです。

精神の領域

環境破壊、経済格差、国際的な紛争等、市場の行き過ぎによって様々な問題が発生している現代。

近代マーケティングの父とされるフィリップ・コトラーマーケティング3.0、ソーシャル・マーケティングなどのコンセプトを提唱するなど、社会的意義に立ち戻ろうとする流れがマーケティングにも生まれてきています。

これらのコンセプトと、マーケティング・ジャーニーは、より良い世界の創造を目的としている点で共通しています。

では、違いは何でしょうか。その一つであり、だからこそ、役割とも言えることは、精神の領域を研究範囲として含んでいることです。

脳科学や心理学の発展によって、現代のマーケティングにおいても、顧客側の精神、例えば、認知、感情、意識・無意識に関する研究と実践は進んでいます。

一方で、提供者側の精神が顧客や市場に与える影響という観点での研究はまだまだ少ないと言えるのではないでしょうか。

マーケティング・ジャーニーでは、仕事を内的世界である精神と外的世界である社会の相互作用のプロセスとして捉えており、内的課題と成長、動機、人間性等が結果に与える影響にもスポットライトを当てます。

それが故に、一歩踏み込み、数値化と再現性を重視するという性質から科学や学術研究では対象としづらい精神性(スピリチュアリティー)の知見も積極的に取り入れ、実践を通じた検証を行っています。

利益の体系から、創造の体系へ

マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

これは、アメリカマーケティング協会によるマーケティングの定義です。

マーケティングの考え方や手法は時代に応じて日進月歩で進化しており、定義も様々ですが、一般論として言えることは、利益が目的であるということではないでしょうか。 ※近年、マーケティング3.0、ソーシャル・マーケティングなど、社会的意義を目的としたマーケティングコンセプトも誕生してきています。

このような利益を目的としているマーケティングを、便宜的にマーケティング・マネジメントと呼ぶことにします。

一方、当ブログにて提案するコンセプトであるマーケティング・ジャーニーの目的は、より良い世界の創造です。

先ほどのアメリカマーケティング協会の定義を基にすると、以下のように表現出来ます。

マーケティング・ジャーニーとは、より良い世界の創造のために、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

マーケティング・マネジメントの主な目的である利益は、世界の創造のための手段として位置付けています。

19世紀に誕生したとされるマーケティング・マネジメントの体系は、熾烈な市場競争の中で発展を続け、今や社会に大きな影響を与え、新たな流れを生み出す力を秘めています。

そのマーケティング・マネジメントをより良い世界の創造を目的とした体系として再構築しようというのが、マーケティング・ジャーニーというコンセプトの試みであり、提案です。

自己一致とコミュニケーション

広告であるにもかかわらず、心を深く揺さぶられ、感動すらするコミュニケーションってありますよね。一方で、同じようなことを言っていて、コンセプトも似ているのだけれども、どこか表面的に感じるコミュニケーションもあるかと思います。

現在のようなソーシャルメディアの時代は、共感がシェア数という結果として明確に現れるので、相手に響くのか、スベるのかは大きな関心ごとではないでしょうか。

相手に響くコミュニケーションと、スベるコミュニケーションの違いを生んでいるのは、何でしょうか。コピー、ビジュアル、サウンドなどのクオリティーの違いでしょうか。もし、それだけではないとしたら、一体、何が違うのでしょうか。

その違いを理解する助けとなる考え方の一つに、心理学に自己一致と言われる概念があります。自己一致とは、簡単に言うと「そうであるべきと思っている自分」と、「あるがままの自分」が一致している状態です。自己一致しているコミュニケーションは相手に響き、逆に自己一致していないコミュニケーションは、相手に違和感を与えます。

例えば、「好き」という言葉一つでも、建前で伝えるのと、本心で伝えるのでは響き方が全然違うと思います。考えてみると当たり前のことですが、ビジネスでは自己一致していないコミュニケーションになりがちです。

「スベってるな〜」と思ってくれるのはまだいい方で、多くの場合は、「なんか嫌い」という感覚しかありません。しかし、受け手としての自分を振り返ってみると、コミュニケーションの背景にある下心や打算をしっかりと感じ取っていませんか。

自己一致しているかどうかは、コピーやビジュアルはもちろんのこと、声色、表情、テンションなどの細部に表れ、トーンとして伝わっていきます。

また、自己一致には深さという観点もあります。人や組織が持っている本来の想いや価値観と深くつながれば、つながるほど、それが表現された時に起きる響は大きくなります。人の心に響くコミュニケーションで有名だったスティーブ・ジョブズは瞑想を習慣にしてましたが、日頃から自分自身と対話し、奥底にある想いを自覚することがその力の源の一つであったかもしれません。

その商品やサービスを通じて、どんな人をどう幸せにしたいのか。自分たちの仕事を通じて、どんな世界を創りたいのか。そして、何者として生きるのか。日々何かを発信する立場にあるマーケターにとっても、自分自身と対話する内省は重要です。

最後に、深く自己一致したコミュニケーションの好例だと思うCMをご紹介します。

◆アップルCM「Think Different.」
https://www.youtube.com/watch?v=W5GnNx9Uz-8
youtubeの動画へのリンクです